【次の余暇は、東京の森で】プライベートサウナに入って、天然の滝壺でクールダウン。心身のデトックスが叶う場所〈自然人村〉
新宿から電車で約60分。思い立ったら都心からすぐ行ける緑の宝庫「秋川渓谷」。川の水は透明度が高く、橋の上から魚の影を追うことができるほど。世界有数の大都市・東京の景観とは思えない、素朴さのある美しい自然が広がっています。
そんな緑あふれる渓谷を有する、東京都あきる野市。その西側に位置する五日市エリアと深沢エリアを拠点に、地域密着で活動をおこなう株式会社do-mo(どうも)。「自然」、「食」、「地産地消」をキーワードに、キャンプ場の「自然人村」、毎年1万人が魅了される「南沢あじさい山」、鮮度のいい地元野菜を使った料理を提供する飲食店「do-mo kitchen CANVAS」と「do-mo factory blan.co」、「石舟 Dining」を運営しています。
自然人村では、2021年、個性的な形の宿泊棟「タイニーハウス」3棟が完成。2022年には貸切プライベートサウナが新設され、2023年には一番大きなタイニーハウスがオープン。ここ2〜3年で急速なアップデートを遂げ、楽しめるコンテンツがどんどん増えているスポットです。
次の休日、手ぶらでふらりとディープな東京の森に身を預けたくなる、そんな過ごし方をご紹介します。
クールダウンは「滝壺」で。ここにしかない唯一無二のプライベートサウナ
バーベキューに川遊び、そしてプライベートサウナやキャンプ。アウトドアアクティビティをめいっぱい楽しめるキャンプ場「自然人村」。JR線武蔵五日市駅から徒歩約20分、タクシーを使っても1,000円前後という、アクセスのいい好立地にあります。
プランは、日帰り・宿泊どちらでもOK。例えば「今日はサウナでととのいたい」、そんなときは手ぶらで自然人村へ向かうだけ。サウナを訪れた人は口を揃えてこう言うのだそう。「東京にこんな素敵な場所があったなんて」と。
現地についたら、まずは入り口にあるラウンジへ。ここで受付を済ませたら、隣にあるサウナ棟に移動します。この扉を開けた先は、完全なるプライベート空間。あなたがととのうための空間が待っています。
樽型のバレルサウナは、大人4〜6人が入れる大きさ。「炭のまち」として発展してきたこの地になぞらえ、炭焼きを彷彿とさせる漆黒のデザイン。サウナ棟全体も、その黒の深さに同調するように落ち着いたトーンでまとめられています。
サウナでジュワッと汗をかいたら、併設の水風呂や目の前の清流に浸かってクールダウン。そのあとは巨大なウッドベンチに寝転がったり、河原にチェアをおいたりして、からだの力をふーっと抜いて全身リラックス。ひとたび呼吸をすれば、澄んだ空気がからだじゅうを巡って、解放的な気分に満たされていきます。
このように、サウナで血行を良くし、水風呂などで身体を冷やし、休憩をして再びサウナへ……ということを繰り返すことで、究極の爽快感やリラックスが得られるとされています。そのため、サウナの魅力を堪能するには「水」が欠かせません。
「自然人村の豊かな環境をサービスに生かしたい。ここでできる唯一無二の体験は何だろう? と考えたときに、キャンプ場のなかにある“滝壺”が頭に浮かびました。サウナは体を温めた後に入る水風呂が重要な要素。そこで、水風呂の代わりに滝壺を利用すれば、ダイレクトに自然を体感できるし、唯一無二の体験になる。この発想がきっかけでサウナが誕生しました。東京のアウトドア施設で滝壺があるのは自然人村だけだと思います」
そう話すのは、株式会社do-mo代表取締役の髙水健さん。自然人村では、サウナ棟のすぐそばに天然の滝壺があり、思わず「わぁ!」と驚きの声が上がる神秘的な光景が広がっています。
ほかにも、サウナのなかでは名産の「あじさい茶」でロウリュウ(*1)や、キューゲル(*2)が可能で、香ばしい香りとともにからだを温めることができます。
(*1)温められたサウナストーンにアロマ水などをかけ、サウナの湿度を上げる行為のこと
(*2)アロマ水などを氷にしてサウナストーンにのせること。 ロウリュウよりゆるやかに香りと蒸気を楽しめる
このあじさい茶は、自然人村の先にあるdo-moが運営する南沢あじさい山で採れた「アマチャ」という、あじさいの葉から抽出したもの。ノンカフェイン、ノンカロリーでリラックス効果が高く、美容にもいいそう。南沢あじさい山ではこのアマチャを500株育て、ジェラートにもするなどして有効活用しているといいます。
「サウナを作ったことで、12月〜2月のキャンプ場の閑散期にもお客さまが来てくれるようになりました。冬は川の水温が7度ほどになり、サウナ好きの方に好まれます。寒さはキャンプ利用で考えるとデメリットでしたが、サウナの視点にすると強みなんです。お客さまから『相当良かった』という声をいただけているように、来てもらえれば満足していただける自信があります。まずはサウナ好きの方にどんどん体感してもらって、その意見を吸い上げて改良のヒントに繋げていきたいと思っています」(髙水さん)
サウナを楽しんだ後は、ラウンジでジェラートを食べながら次の目的地を考えるもよし、キャンプ場の森を散策するもよし、南沢あじさい山に足を伸ばすもよし。「まだ知らない東京」の姿にきっと出会うことができるはず。
使っているのは「東京の木」。多摩産材にこだわるその想い
バレルサウナ、休憩用のウッドベンチなどを含むサウナ棟はもちろんのこと、ラウンジ、4棟の宿泊施設「タイニーハウス」は、すべて地元の木材・多摩産材で建てられています。この「多摩産材」とは、東京の多摩地域で育て、生産、認証された木材のこと。「総檜の多摩産材のサウナはおそらくここだけ」と髙水さんは話します。
「東京都では、多摩地域で生育し、適正に管理された森林から生産された木材を多摩産材として証明することで森林の循環(伐採、利用、植栽、保育)を促進し、木材の利用拡大を目指す取り組みがおこなわれています。ここは東京にあるキャンプ場ですし、株式会社do-moの事業全体で地域のものを使うことを念頭に置いているので、コストは少し高くなってしまうけれど、使うことで自分たちがこの地で事業をやる意義があると思い、活用することを決めました。それに東京の木を使うと、長距離輸送が不要になって環境にも配慮できるんです」(髙水さん)
輸送距離が短くなれば、輸送エネルギーが減る。その結果CO2排出量の削減が見込まれるため、環境保全に大きく貢献できます。また地産地消することで、地域の林業・木材産業の活性化にもつながります。
ただ、多摩産材でサウナを作るために失ったものも。
「多摩産材を扱う東京の製材所は狭いので、木材をストックできる量に限りがあって。年間単位で受注しているので、飛び込みでポンと買えないんですよ。だから多摩産材でサウナを作るんだったら、オープン予定のゴールデンウィークに間に合わないよって言われてしまって。でも、私たちとしては多摩産材で作らないと意味がない。だからハイシーズンの売り上げを捨ててまでタイミングを待ちました。あじさい山もそうですが、地元の資源を生かすことに意義がある。これは株式会社do-moとして譲れない部分でした」(髙水さん)
そして2023年にできたラウンジは、「ありのまま」という自然人村のコンセプトに合わせて、土壁に自然人村の山の土を混ぜ、カウンターテーブルにも地域の石を用いています。空間中央には、存在感のある極太の一本柱。これはお隣・檜原村のもの。もちろん、多摩産材です。
他にはない「個性」で、訪れる人の満足度を高めていく
今後は自然人村のラウンジで「サウナ飯が提供できたら」と、髙水さんは構想しています。
「自分自身、サウナのあとはこってりしたものが食べたいという気持ちがありつつも、自然人村ならではのオリジナリティも加えたい。そこで、do-moのレストラン事業が得意としている「薬膳料理」を生かすのはどうだろう、と。今後は自然人村のラウンジで薬膳カレーとパニーニが食べられるように、準備を進めています」(髙水さん)
サウナ中はびっしりと汗をかき、身体の水分と塩分が外に出ていくもの。それにエネルギーも使うため、塩分と炭水化物が補給できる食事はユーザーにとって、願ったり叶ったり。それに、カレーには高麗人参やナツメグなどが使われ、パニーニのパンには竹炭が練り込まれており、食べることでより一層のデトックス効果が期待できます。
そして、さらなる自然人村のサウナのバリューアップを目指し、オリジナルのサウナウェアやタオルの制作も進行中。
「サウナ後に水風呂から入って休むとき、とくに寒い時期はポンチョがあるとからだの熱が逃げなくていいんです。ロケーションだけでなく、使うアイテムを含めて“唯一無二のサウナ”として地域を盛り上げていきたい。サウナ飯同様、2024年度にはお披露目したいと思って頑張っています」(髙水さん)
そのほかにも、お客さまの声や子どもが生まれた自身の実体験を踏まえて、授乳室を作ったり、シャワー室の数を増やしたりする予定も。先代がつくり上げた50年という歴史あるキャンプ場の変わらない価値は守りながらも、新たな観点を加え、自然人村の進化はまだまだ続きます。
循環させて、還元する。地域の多様な楽しみ方を伝えるdo-moの想い
「地のもの」を使っているのは、自然人村だけではありません。冒頭で紹介したとおり、株式会社do-moとして「CANVAS」と「blan.co」という2つのレストランを武蔵五日市駅前で経営しており、そこでも積極的に地域の食材を使っています。
「あきる野市は鮎が有名で、全国各地の鮎の美味しさを決める品評会で準グランプリを3回受賞したほど旨みが詰まっているんです。そこで、鮎の名産地の事業者として「鮎ちょび(アンチョビの鮎バージョン)」や「鮎オイル」というオリジナル商品を開発し、レストランのメニューに生かしています。これらの商品がメジャーになれば、地域の特産物を知ってもらえるきっかけになる。その結果として、自分たちの取り組みが地域の活性化にも繋がっていく。だからこそdo-moの事業全体で「地のもの」を使うことにこだわっています」(髙水さん)
さらに2つの飲食店と並行して、2023年4月には3店舗目となる「石舟 Dining」をオープンしました。
「自然人村から車で15分のところに「秋川渓谷 瀬音の湯」という温泉があります。その中の食堂の運営を2023年からdo-moに託していただいています。瀬音の湯は、全国の温泉施設を対象とした「うる肌部門」で、全国1位を3回とっている有名な温泉です。多くの方がこの地域にやってくるきっかけとなる場所なので、ここでファンになってもらえれば、きっと温泉周辺の秋川渓谷を回遊してくださる。この地域の魅力を知ってもらえたら、大好きな場所のひとつになると思うんです。だから食堂でも、他にないものという目線で、地域の特色を知ってもらえるメニューを打ち出しています」(髙水さん)
「石舟 Dining」では、鮎の釜飯や青梅産豚のタレカツ丼、秋川牛のサーロインステーキなど、ここでしか味わえないメニューが盛りだくさんです。
2016年にdo-moを立ち上げてから8年。飲食店をオープンし、南沢あじさい山の承継活動をスタートさせ、歴史あるキャンプ場の事業も受け継ぐなど、あきる野市の五日市・深沢エリアをベースに複数の事業を展開してきました。しかし、活動が多岐にわたることから「do-moは何屋? 何が目的?」と聞かれることも多いといいます。
ですが、事業は複数あれど、すべての根底にあるのは「自分たちの活動が地域活性に繋がっていくこと」。楽しめること、体験できること、味わえることを発信しているdo-moとしての想い、考えを言語化して伝えることで、“エリア一体”で楽しんでもらえるのではないか。その気持ちは年々強くなっているといいます。
例えば、自然人村をフックに考えてみるとします。サウナのロウリュウを通して「あじさい茶」に興味を持ってもらえたら、近くにそのあじさいが多く咲く山の存在を知る機会になります。そして、自然人村の最寄り駅に出れば、あじさい茶が飲めて、あじさい茶ソフトクリームを食べられるお店もあり、「あじさい茶」ひとつとってみても、楽しみ方は広がります。
飲食店の視点に変えても、同様のことがいえます。「CANVAS」で食べた鮎を使ったパスタが美味しかった。その体験から「あきる野市は鮎が名産なんだ」と、地域の特色を知ることにつながります。さらに、その鮎が棲んでいる川の水の透明度を見て「東京にもこんな綺麗な場所があったんだ」と、心を動かすことができるかもしれません。
自分たちの事業を通して、地域の多様な楽しみ方を伝えたい。そのツールとして、東京都の事業(*3)における事業推進支援も活用しながら、do-moの取組を伝えるパンフレットの制作にも取り組んでいる最中。do-moの活動は、拡大しながらも循環しているのです。
(*3)東京都・公益財団法人東京観光財団 新たなツーリズム開発支援事業
東京未開の地「深沢エリア」の開拓も視野に
近い将来、自然人村と南沢あじさい山のある「深沢エリア」を開拓していきたいと髙水さんは考えています。
「いまは33世帯が住んでいますが、高齢化の影響で空き家が急増してしまう危険性があることを自治会活動や地域づくりに向き合うなかで知りました。深沢は駅から車で5分とアクセスがよくて、他の場所にはない魅力も詰まっています。だからこそ、空き家を含め地域全体を一つのホテルに見立てておもてなしをするなどして、地域の合意形成を取りながら観光資源化していきたい。山梨県小菅村が「村ごとホテル」という取り組みをやられていますが、自分たちがやりたいことのイメージにすごく近いなと。人をたくさん呼ぶのではなく、深沢ならではの世界観を作ることができたらと思っています」(髙水さん)
この「深沢」は、自然人村から先の山あいのエリア。あきる野市で駅から一番近い深い渓谷がある地域で、「山抱きの大樫」という天然記念物に指定されている巨木や「千年の契り杉」という巨樹のあるパワースポットです。
自然人村がエントランスとなる深沢エリアを、唯一無二の観光資源に。代々受け継がれてきたものを、若い力と新しいやり方で、いまの時代、次の世代へ紡いでいく。あきる野市の西側、深沢というコンパクトなエリアでも、多角的に楽しめるコンテンツは今後増えていきそうです。
遊んで、休んで、癒されて。食べて、知って、思いっきり楽しむ。知れば知るほど、ファンになってしまう魅力あるまち、あきる野市。
次の休みは東京の森で、身も心も胃袋もデトックスしませんか。きっと東京の「好き」がひとつ増えることでしょう。
※株式会社do-moの一部事業では東京都・公益財団法人東京観光財団 新たなツーリズム開発支援事業を活用しています
<コーポレートサイト>
株式会社do-mo:https://do-mo-crew.com/
<事業サイト>
do-mo forest 自然人村:https://shizenjin-mura.com/
南沢あじさい山:https://ajisai-yama.com/
do-mo kitchen CANVAS:https://kitchen-canvas.net/
do-mo factory blan.co:https://factory-blanco.tokyo/
秋川渓谷「瀬音の湯」内 石舟Dining:http://www.seotonoyu.jp/dining/
Text:Rie Yamahata
Photo:Hao Moda(文中2、3、10、11、12、13、15枚目)
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