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達人に聴く!東京の森のこと。

「森と踊る」三木一弥さん

 

Q.1お仕事を通じてどのように森に関わっているのでしょうか?

 

「森と踊る」では、50年くらい前に植林されたものの、いろんな事情でほっとかれていた森を、自然な多様性のある森に戻していくお手伝いをしています。戻っていくプロセスの大半は自然界がやっていくんですけど、森が傷んでいく負の連鎖を反転させるきっかけをつくってあげる、ということを気にしながらやっています。
「自然界にとって健全な森ってなんだろう」という問いを持ちながら森と関わっています。植林したのはいいけど間伐もしないで、光の入らない真っ暗な森になると、その下にある一番大事な土中の環境がすごく劣化していたりするんです。なので、その土中の環境を改善するような地ごしらえだったり、普通の林業ではやらないようなところをしています。

また僕らは、切った丸太を原木市場に売るのではく、製材所に持ち込んで、板材や角材にして売ったり、それをさらに家具に加工して売ることもあれば、リフォーム用の木材にして工事まで手掛けることもあります。森ではきこりのような仕事をして、製材・加工業もやって、時には建設業に近いことまでやる。森の木に関する川上から川下までやっている感じです。

林業では伐採したら植樹するのが一般的ですが、僕らは”植えない林業”を実践しています。適切に間伐をして、気候や地形の多様性をつくることで、虫や草も違う種類が生えてくる。そうすると鳥も違う種類が入ってきて、糞や種を落としてくれる、そうして自然とまた新しい植物が生えてくる。美しく紅葉する森をつくろうと人間が意図して植えるのではなく、あくまで生き物たちが育てるものを決める。そういう意味で、植樹というのはほぼほぼしないですね。

 

 

Q.2森のお仕事で楽しいことはなんですか?

 

手を入れれば入れるだけ、美しくなったなと感じるんですよね。一年二年経つと、植生が目に見えて変わるので、その変化を日々感じられるのは嬉しいです。あと、分かりやすいのは道を作る時。こんなところに作れるんかな、というところに道を作ったら、これがなかった前の景色を忘れちゃうくらいに変わるんですよ。それはすごく面白くて、クリエイティブなところです。

自然を相手にしていると、教科書的な学びだけではなくて、五感だったり、現象から推測したり観察する学びがある。自然界の繊細でありながらダイナミック、かつ複雑でありながら、筋はすごいシンプルみたいな。そういうことを身体で感じられるのは楽しいですね。机上の世界じゃないから、一本の木を切るとそこがぽっかりと明るくなったり、リアルな空間が変化していくのも、すごく楽しいです。
木って毎日成長するような感じがしないじゃないですか。でも自然界は動的平衡っていうのかな。動いてないようで、ものすごく動きがあるっていう。日々その小さな変化を、動画で見てる感じ。毎日ちょっとずつ変化しているのを感じられるのは楽しいですね。

 

 

 

Q.3東京の森がもつ課題などはあるのでしょうか?

 

本来の健全な森のポテンシャルが100だとしたら、日本の森の大半は30くらいかな。それが危機的といえば危機的かもしれない。でもこの危機は自然界にとって危機的なのかというと、彼らはとてつもない時間をかけてでも復元していく力はあると思うし、むしろそのプロセスの中では破壊と創造が起きていく。例年にない大雨で山が崩れるというような報道を見ていると、僕の見方はそうではなくて、やっぱり人間がコンクリートで固めたりしてきたことが、全部地続きに繋がっていると感じるんです。自然の中の空気や水の流れを分断させてしまっているんで、巡るものが巡らなくなり、詰まっている。だから最近そういうことがたくさん起きてるのは異常気象だけではなくて、人災という見方をしてもいいんじゃないかなと。そう思うと、東京の森に限らず、まぁまぁ危機的な状況じゃないかなと。人間の暮らしの安定や安全という目線で見ればね。僕も最初の頃は森や地球が危険だなと、どんどん取り返しのつかないことになるんだと焦りはありました。けれど関わる年月が長くなれば長くなるほど、これは森林が危険なんじゃなくて、人間社会が危険なんだなと。どうやって我々人間が、自然の恵みを受けながら安全に次の世代まで暮らせるかを、そろそろ考え直さなくちゃいけないんじゃないかな。

 

 

Q.4私たちにもできる森との関わり方はあるのでしょうか?

 

いっぱいあると思うんですよ。大きなことをしなくても、子どもたちが遊ぶようなスコップひとつで森の土に溝を掘ってあげるだけで、その点から周りにどんどん変化が起きるんです。常に空気と水は連動して一緒に動いているという自然の理があり、それが巡るから色んなところに必要なものが巡っていく。だから普段僕らがやっていることをワークショップにして、それをみんなに知ってもらう。例えば、都心に戻って、お庭がいつもじめじめしているというのを、四隅に穴を掘って少し炭を入れてあげるだけでも全然変わってくるんですよね。

それと、ワークショップとかでそういうことをやればやるほど、地球も人間の身体と一緒だね、という気持ちになって皆さん帰るんですよ。例えば人間の髪の毛が木だとすると、髪の毛だけ整えても内臓がぼろぼろだったら、また髪は抜けちゃうじゃないですか。鍼とかも必ずしも痛みがあるところに施術するわけではなくて、そこと繋がっている足裏のツボだったり。要は身体全体が繋がっているから、どこにレバレッジをかければ滞っているものを巡り出すのか、というのを彼らはやっているわけです。僕らが森でスコップでやっていることも、どこにツボがあるのかを探ってみるということ。それを人間が感知できれば、自然は自然の力で復元していく。だから皆さんにできることはいっぱいあるし、自分にもできるんだ!という体感を持ってほしい。そして人間はどこかしらの大地で生きているので、知恵を分かち合ってほしい。こういうのは多くの人にとって盲点になっていますから。自分に何ができるか分からない、でもスコップ一個でもできるんだとわかれば、旅行先でただ見るだけでなくて、傷んでいる場所を改善して帰ってくることができる。

ただ森でぼーっとするという会もやっていますけど、結構人気のイベントなんですよ。自然の中で何かする前に、”何もしない”というのをやって、それで自分がチューニングされたら今度は森に還してあげる。そういうステップを踏んでもいいと思いますね、だいたい皆さん疲れていますから(笑)。
そうして自分をリセットしてから、自然界に還元していくと、今度は自然界からリアクションが返ってくる。これが本当に自然界との会話が進むんですよ。次のステップとしてそれをやると、ただ癒されている森林浴とは違って、人と自然も巡っていくんです。

 

 

三木一弥
森と踊る株式会社 代表取締役
兵庫県とインド育ち。子供の頃から、遊園地より動物園、屋内より屋外へと大自然に惹かれる。横浜国立大学大学院工学修了後、株式会社クボタに入社。浄水、下水などの水処理のエンジニアを経て、組織改革、新規事業立上げを経験。2013年末、突如きこりになることを決意し、退職。2016年2月、「美しい自然がどこまでも広がっている。そこで人々が笑顔で分かち合っている。モノやコトも分かち合っている。自然と人も分かち合っている」という100年後の未来を実現するために「森と踊る株式会社」を設立。

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