達人に聴く!東京の島のこと。
「離島経済新聞社」大久保昌宏さん
Q1.お仕事を通じてどのように島に関わっているのでしょうか?
離島経済新聞社(リトケイ)として、全国420ほどの有人離島の情報発信をしております。情報発信がなぜ必要かというと、人口規模が小さいところのニュースって埋もれてしまうんですよね。島にとって素晴らしいことをやっていて、他地域にとっても水平展開できるような事例であっても、一つの島から情報発信をしようとすると、情報過多の世の中で埋もれてしまい、伝えたい人に伝えられなかったりします。日本の輪郭って島が形づくっているので、その輪郭にある島がそれぞれの魅力を灯して輝くことによって、日本という国の美しさや魅力が伝えられるんじゃないかと思って情報発信に重きをおいて動いています。
とはいえ、情報発信だけではなかなか伝わらない部分だったり、地域の方々とお話をしないと分からない部分がたくさんあるので、僕自身は2017、18年くらいから地域の中に実際入っていって、役場の方や民間事業者の方、あるいは島外の企業の方とご一緒しながら、島づくりや地域づくりのお手伝いをしています。
東京だと、本当にたくさんの島に関わらせてもらいました。利島に関しては、リトケイを立ち上げた頃から応援してくれる人がたくさんいたり、新島はプライベートも含め関わって11年目になり、一つの島に関わる度にそこに根付いていくように、長い視点でのお付き合いが続いています。
Q2.島のお仕事で楽しいことはなんですか?
仕事は物理的に離れていることもあって、めちゃくちゃ難易度高いんですよね(笑)。でも難易度が高いが故かもですが、いつも新しい気づきを貰えます。
たとえば島に行った時に、領収書になんて書くの?って聞かれて、「離れる島で離島経済新聞って書いてください」って言ったら、「離島ね〜、わたし達からしたらここが本土なんだけどね」って話をされて、視点を切り替えると本土側が離島にみえるのかと。すごく含蓄のあることを教えてもらったりもしますし、そういうところがすごく楽しいなと思いますね。
仕事が長く続けば続くほど、東京のくさやじゃないですけど噛めば噛むほど味がでるような(笑)関係をつくっていける島の方々の人間性も面白くて。初めはすごくつっけんどんだったのに、いつの間にか飲み友達になってたり。前職は広告制作会社に勤めていたんですが、都市部の仕事では得られないような人間関係が得られて、今は仕事をしていない島の方々とも日常的にやりとりをしていて、「今、東京来てるんだけど、飲みにいかない?」とか連絡がきたり。そういう仕事のバックヤードに、ずっと人間関係があるというのは嬉しいし、楽しいなと思います。
そうなってくると、自分の仕事の先に笑顔になる人がどのくらいいるのか、そういうことを意識するようになるんです。中途半端にやめられないし、きっちり成果を出したいと思う。それはすごくやり甲斐があります。
Q3.東京の島がもつ課題などはあるのでしょうか?
一番言われているのは少子高齢化と人口減少になるかと思います。特に東京の島の場合は、40年前くらいに離島ブームがあって、観光客がめちゃくちゃ行ってたんですよね。そこから比べると人は減ってきているし、少子高齢化も進んでいます。
ただ僕はそれを課題とは思ってなくて、課題の先にある結果論だと思っているんです。人口減少も少子高齢化もあくまでも事象で、その事象の要因になっているものが課題であって、その要因を因数分解しきれていないことに危機感を感じるんですよね。
例えば、今回コロナで観光客が来なくなって廃業する事業者さんがいて、働く場所がないから島を出ますとか。そういう風に人が流出していく過程があるわけで、そこを解決するためには何をすべきなのかって考えた時、外から人をいれた方がいいよねとか、この島に住み続けたいと思って貰えるような福祉政策が必要ですよねとか、教育などもそうですが多岐にわたる課題が密接に絡み合っている。それを俯瞰して因数分解して、どこから手をつけていくのかを戦略的にやっていく時代にきているのかなと思っています。
特に民間の人々が住んでいる東京の島は11島あって、各島の人口規模を見る必要もあると思うんです。一方で11島合わせて何人ぐらいいるんだろうか、市場規模はどれくらいなのか、そこが連携していった時にどのくらいの可能性があるのかとか、そういう横の連携を高めていくことによって、点で受けるのではなく、面で受けていくことができるんじゃないかと感じていています。これは東京の島々だからこそ特にそう思います。
例えば、旅行者の分析をかけると、自分の住む県内での旅行が圧倒的に多いんですよ。鹿児島や沖縄だったら、自分の県内に他にも観光地があるなかで、離島はなかなか選択しづらい。人口規模的にも。
でもこれが東京だったら、東京都の人口がいて、その人たちが島にも来る可能性もあって、かつ東京という都市としてのブランドもあるので、そこに対して来る人たちもひっぱり込みやすいというのがある。なので、外からそういう人達を受け入れる時に、点で受けるより面で受けた方が、効率的になるだろうと感じたりします。そういう特性も考えた上で、包括的に取り組んでいくというのが求められているのかと。
Q4.私たちにもできる島との関わり方はあるのでしょうか?
これはたくさんあって、先ほどの状況の結果として人が減っている。もちろん行政の財源的な話をすれば人が多い方が良いに決まっています。けれど、これから日本の人口が劇的に増えることはないだろうという中で、それ以上にそれぞれの島を応援してくれるファンのような方々を可視化していくことが、とてもとても重要なことだと思っています。いわゆる関係人口と呼ばれるものですね。けれど、関係人口を増やしていきましょうと言われるなかで、地域内でその話を聞いていると、その人達ってどこに何人くらいいるのか分からないんです。なるべくだったら、その人たちの顔が見れるような関係性をつくりたい、地域側にもそういう思いがあります。なぜならそういう方々がいることによって、地域目線でこういうことができるとか、そもそも励みになるよね、とか。そういう部分が、島のこれからの伸びしろや可能性としてすごく感じます。
なので、まずはそれぞれの島のことを知ってもらい、現地で感じてもらう。来れなくても今はふるさと納税があったり、島とのタッチポイントってとてもたくさんあるんですよね。東京都内にも島の料理が食べられるところがあったりもするんで、少しでも触れてもらえれば、それが一番の関わり方なんじゃないかなと思います。そして興味を持ったら、次はリトケイをひらいてもらって(笑)。そうして段階を踏んでちょっとずつでも関わってもらえたらいいなと思います。
大久保昌宏
特定非営利活動法人離島経済新聞社 理事
一般社団法人ツギノバ 代表理事
東京都出身。大学卒業後、広告制作会社等を経て、 2010年、株式会社離島経済新聞社設立。取締役に就任。 2014年、特定非営利活動法人化に伴い事務局長就任。 2015年、代表理事就任。2021年より現職。 事業ディレクターとしてコミュニティデザインやエリアマネジメント支援、 各種計画策定やプロモーション、教育・人材育成、コミュニケーションサポート等を担当。
現在は、北海道利尻町にて一般社団法人ツギノバを設立。北海道利尻島・鹿児島県沖永良部島・東京都新島を中心に、地域づくりを目的としたコミュニティスペースの運営、定住移住支援、創業・起業・継業支援、各種行政施策支援等を行なっている。
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