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「Nature Tokyo Experience」に見る、ありたい未来を共につくる対話型のサポート

多摩・島しょ地域の事業者を支援するプログラムとして2018年度から2024年度までの7年間実施した「Nature Tokyo Experience」。東京都・東京観光財団が実施するこのプログラムに採択された事業者には、3年に渡って体験型・交流型の新たなツーリズムを開発するための助成を行ってきました。

 

また、同時に専門性の高い事業プロモーターによって対話型のサポートを実施。事業者が取り組みたい事業や広報の方向性を、対話を重ねる中で見定め、多角的にサポートしてきました。こちらの記事では4社に焦点を当て、採択事業者と事業プロモーターが、どのように連携しながらプロジェクトを推進してきたかを振り返ります。

 

※CASE STUDY①は2022〜2024年度の3年間実施。②〜④は2022年度が3年目となり終了。

 

 

2022年度にはコロナ禍の影響によるライフスタイルの変化にも対応するかたちで、「FIND OUT YOUR FIELD -都市と自然、どちらもある日々を-」をコンセプトに据え直しました。

 

 

CASE STUDY①
株式会社do-mo / 自然人村

 

 

【概要】
あきる野市五日市エリアでキャンプ場「自然人村」をはじめ、地元食材を活かした飲食店「CANVAS」と「blan.co」を経営。また地元の方から引き継いだあじさい山の管理・運営を行っている。

 

 

【課題・目的】
do-mo代表の高水氏が父親から継承したキャンプ場「自然人村」を段階的に改修・アップデートしており、多摩産材を活用したサウナやタイニーハウスなど新設を計画。地元出身である高水氏には地域の方から声がかかることも多く、 さまざまな事業に取り組んできたが、各事業に一貫したストーリーが紡がれていないことから、do-moという会社としての核が見えづらい状態になっている。

 

【支援内容】
① do-moの複数の事業の軸・コンセプトの言語化(2022年度)

② do-moの複数の事業を対外的に伝えるためのカタログの制作(2023年度)

 

③do-moの付加価値を高める企業研修プランの制作(2024年度)

 

【広報支援】

2022年度:「BRUTUS」のサウナ特集内でキャンプ場に新設したサウナ施設を掲載
■掲載URL:https://brutus.jp/shizenjin-mura/

2023年度:「FRaU」取材記事にて新設のタイニーハウスを中心にdo-moのサービスを幅広く紹介
■掲載URL:https://gendai.media/articles/-/123280

2024年度:「IDEAS FOR GOOD」にてdo-moの哲学を伝える対談記事を2本掲載
■掲載URL-1:https://ideasforgood.jp/2024/11/29/domo_1/
■掲載URL-2:https://ideasforgood.jp/2024/11/29/domo-02/

 

【事業プロモーターコメント】
do-moの多岐にわたる事業を一貫性のあるコンセプトで結びつけること、特に「あきる野の自然と地域に還元したい」という思いを、東京のお客さんに伝え、共感を得ることを大切にしました。1年目は幹部4名との対話や視察を重ね、高水氏が目指す社会を深く理解し、「東京の森を創造的な空間へ」というコンセプトを策定。2年目はこのコンセプトを基に事業の共創関係を可視化するカンパニーカタログを作成し、3年目は言語化したdo-moのコンセプトに合致するターゲットの獲得を見据えたツアーづくりを支援しました。

 

「自然人村」では深沢渓の自然地形を活かした体験型・共創型の観光展開が可能です。3年間のコミュニケーションを通じて、「東京の森」は創造の源泉であるという気づきを促し、持続可能性や地域固有の価値にも目を向けてきました。「創造的な空間」と「おいしい」をテーマに、消費型ではない、do-moならではの価値を創り出しています。また、そこに歴史や文化といった要素を掛け合わせていくことで、さらに深みのある体験を提供していくことが期待されます。

 

 

CASE STUDY②
株式会社旅倶楽部 / あつまれ!! ぶどうの森グランピングフィールド

 

 

【事業概要】
2020年に東京・三鷹市に所有する三鷹オーガニック農園を活用したグランピングフィールド「あつまれ!! ぶどうの森グランピングフィールド」 をオープン。観光や農業と親和性の高い新しいフィールドアクティビティを提供している。

 

 

【課題・目的】
旅倶楽部代表の金子氏は旅行業に従事した経験を活かしながら、父親から事業継承した農園を「チャレンジの舞台」として、オーガニック農園のみならず農業やぶどう栽培に関するスクール、イベントなどのアクティビティを交えながら経営の多角化を実施。また、あつまれ!! ぶどうの森三鷹グランピングフィールドは・武蔵野エリアのハブとしての役割を担っていきたいが、金子氏一人で経営と運営の双方を担当することは困難であり、お客様と地域の方とのコミュニケーション面が課題に。地域の方々に取り組みの理念を伝えるコミュニケーションを促進し、地域との関係性が育まれる土壌をつくりたいと考えている。

 

【支援内容】
①旅倶楽部公式Webサイトリニューアルのサポート
毎月の定例打ち合わせにおいて、コンテンツの拡充、インターフェースの改良などに関するアドバイス

 

 

②地域の方々との連携・コミュニケーション促進
金子氏の思いや構想の棚卸しと言語化を実施。金子氏が企画しているイベントに参加される方々によりファン・リピーターになっていただくためのアドバイスを実施。集客・広報に寄与するプロモーションの方法や、「名刺代わり」になる動画やnote記事の制作を行い、それらを展開するコミュニケーションについても提案を行った。
【東京・三鷹】都内の「ぶどうの森」でグランピング体験を|ブランドムービー
【東京・三鷹】都内のオーガニック農園でグランピング展開|インタビュームービー

 

【広報施策】
note&YouTube開設と吉祥寺経済新聞への掲載
事業伴走で言語化した事業構想やその背景にある想い、展望を伝えるコンテンツをつくり配信した。
地域密着メディアである「吉祥寺経済新聞」では、取材記事を通じ近隣の住民に対しても事業内容や想いを周知した。また三鷹エリアとしての体験を創出・提案することで地域内連携を促進した。

 

【事業プロモーターコメント】
アイデアマンである代表・金子さんには多様な事業展開の構想を、客観的にディスカッションする機会が必要だと考え、まずはお話をじっくりと聞きました。やりたいこと、やるべきこと、できることを整理した上で優先順位を整理しながら、年間の計画に落とし込んで実施しました。
代表として日々お忙しくされている金子さんが、直接コミュニケーションをとることが難しいという課題に対して、どうすべきかをスタッフの方含めて話し合いました。そして、直接金子さんがお話しなくても旅倶楽部としての考えや空気が伝わるように、動画やnoteの記事などの広報ツールを制作し、施設の周知に力を入れました。

何より感じる可能性の種は、新宿から30分程度で行けるロケーションと都市部ではなかなかお目にかかることの少ない広大な敷地です。その活用の仕方次第で大きな可能性を秘めていると感じます。ハブとして、エリアの編集拠点として機能させることで、武蔵野エリアに新たな光をさすことができるのではないでしょうか。

 

 

CASE STUDY③
トレイルヘッズ株式会社 / HINOKO TOKYO

 

 

【事業概要】
都心から車でわずか1時間半、東京都檜原村にあるメンバーシップ制のキャンプ場「HINOKO TOKYO」。檜原村の檜材と杉材を組み合わせたサウナ小屋をオープンし、ロウリュウができるフィンランド製の薪ストーブを設置した。

 

 

【課題・目的】
トレイルヘッズ株式会社の代表である山口氏は「BACK TO NATURE」を会社のビジョンに掲げ、自分たちが目指す「働くこと、暮らすこと、遊ぶこと」が融合する場所として、会員制キャンプ場のHINOKO TOKYOをオープン。2021年のサウナ小屋オープン時には、SNSでオープニング投稿などを行い、300名の会員を獲得。メルマガ登録者(会員登録のためのウェイティングリスト)は約3,000名など人気を集めていることもあり、休日は利用希望者が多い。一方でまだ稼働に余裕のある平日の集客につなげるために、かねてより提案していた「森ワーク」を実践したい法人やワーカーの誘致を検討。

 

【支援内容】
「ひとが持つ創造性を開放する」をテーマに、チームビルディング研修を開発
これまでの「森ワーク」では、Wi-Fiやワークスペースの設置といったハード面での環境整備が主であったが、より多くの利用を促すため、ソフト面での充実を目指すことに。野外研修の専門家である伊藤博志氏を招き、HINOKO TOKYOを視察、フィールドを活かしたプログラム案を設計。従業員全員でプログラム内容を体験し、プログラム内容についてディスカッション。実際にサービスローンチするために、研修プログラムを整理するとともに告知方法や資料内容を検討。自分たちのフィールドを活かしながら、新しいかたちで自然体験の付加価値を顧客へ届ける方法を知ることができた。

 

【広報施策】
「BRUTUS」にチームビルディング研修の記事を掲載
HINOKO TOKYOでのチームビルディング研修の様子を自社サイトに掲載し、情報発信を行ったほか、その様子をWeb版「BRUTUS」にて取材・掲載した。
■掲載記事:https://brutus.jp/hinoko-tokyo/

 

【事業プロモーターコメント】
トレイルヘッズは企業のオフィスや商業スペースの企画・設計・デザインを手掛け、その企業らしさを表現する空間を創造していますが、メンバー全員が自然から学びそして自然の素晴らしさを人々に伝えたいと活動しておられます。HINOKO TOKYOもその自然のなかにあるキャンプ場として自由な空間があり、またサウナという“衣を脱いでつきあえる空間”もそこで運営していることから、チームビルディング研修を企画する流れになりました。

 

東京は大都市だけではなく、自然も豊かであることが魅力です。この取り組みにより、自然に分け入り自分自身の可能性と向き合い、チームとしての力を高めていき、都市部で創造的に働くバイタリティになっていくことを信じています。

 

 

CASE STUDY④
株式会社Niijima Farmers / Niijima Villa 菜宿物語

 

 

【事業概要】
東京都の離島という特色を活かした「農業と海と観光」を融合させた旅を演出するために生まれた1日1組限定の宿「Niijima Villa 菜宿物語(さいしゅくものがたり)」を展開。

 

 

【課題・目的】
新島出身である代表の内藤氏が、内地とは違う”島時間”を感じてほしいという思いで2022年にオープン。宿以外にも農園や飲食店を経営しており、かつ家族経営で人手に限りがあり、発信や集客までなかなか手が回らない状態にあった。
サウナ、露天風呂の許認可を申請するなど、設備の拡充を徐々に図ってきているが、 特に繁忙期は人手不足が課題に。宿の稼働率向上と、Niijima Farmersが理想とする姿の両立を模索していた。

 

【支援内容】
①サウナオープンにあたり行政手続きのサポート
サウナ施設の開業にあたり、所管の保健所や士業者、既に開業している同業他社等へのヒアリングを重ね、許認可取得に必要なサポートを実施。

 

②ターゲットの整理とペルソナの言語化
事業者に対し、目指す営業スタイル、顧客とのコミュニケーション方法、新島での過ごし方についてのヒアリング及び意見交換を実施。
バブル時代に新島に遊びに来ていた若者がミドルエイジ層になり、そんな人たちに自然とともに何もしない、ゆったりとした自分の時間を過ごしてほしいという思いを内藤氏からヒアリングする中で、「なにもしない贅沢」というコンセプトを抽出。
さらにコンセプトを深掘りするとともに、対外的な言語化とターゲット像の可視化を行った。

 

③予約フォームを導入における各種設定作業をサポート
人材不足解消のため、自社で開発されたWebサイトにて直接お客様からの予約を承る体制と環境の構築をサポート。

 

【広報支援】
「男の隠れ家 Web」にて取材記事を掲載
ターゲットと親和性の高い媒体として、男の隠れ家 Webでオフシーズンも含めたNiijima Villa 菜宿物語の魅力を訴求した。
■掲載記事:https://otokonokakurega.com/meet/secret-base/76197/

 

【事業プロモーターコメント】
比較的旅慣れた人やリピーターが多い新島。島を訪れた人たちが、それぞれに自由な過ごし方ができることが新島の魅力の一つだと思います。「何もしない贅沢」や「自然とのつながり」といった、新島ファーマーズが考える新島での理想の過ごし方、楽しみ方にも共通していると感じました。だからこそ、「ご自身がやりたいことを実現できるように」を最も意識して関わらせていただきました。

 

 

メディアやイベントなどの全体広報も充実

個別の事業者支援の他、「Nature Tokyo Experience」プロジェクトの広報にも力を入れました。
事業者の取り組みを都民に知っていただく広報としてのイベント開催や、事業者間の連携や探求の場としての専門家を招いたフォーラムなど、東京都民や事業者向けの取り組みも実施しました。

 

「TOKYO LIFE FINDERS -都市と自然、その間にある暮らし-」(2022年10月)

新しい視点の「TOKYO LIFE」を提案するイベント「TOKYO LIFE FINDERS -都市と自然、その間にある暮らし-」を下北沢の「BONUS TRACK GALLERY」で開催。展示とトークで構成し、のべ2,226名の来場者が訪れました。

 

「TOKYO OUTDOOR MARKET 2023」ブース出展(2023年10月)

OUTDOOR GAME CENTERをコンセプトに、お台場で開催されたアウトドアイベントに出展。多摩・島しょエリアが描かれたピンボールをプレイし、入ったポケットに記載された自治体に関するクイズに正解すると、多摩・島しょエリアでつくられた食品やアイテムがもらえるブースは終始行列ができるほどのにぎわいを見せました。

 

体験型・交流型の新たなアクティビティを島しょ地域で考えるワークショップ 「REGENERATIVE―未来へつなぐ旅の兆し」(2023年10月)

「海」、「火山」、「固有の動植物」といった豊かな自然資源と、旧石器時代から人の往来があったという長い歴史を生かした本質的なアクティビティの需要が高まっている伊豆大島。そんな今注目の地域で、東京都の島しょ地域11の島を結ぶ事業や交流を生み出している「TIAM(ティアム)」の企画のもと、地域の資源を活用した未来志向のツーリズムの可能性を探るワークショップイベントを開催しました。

 

みたけレースラフティングクラブ ✕ do-mo 自然人村 スタディツアー(2024年10月)

新たな地域観光モデルをより一層磨き上げるためのスタディツアー。有識者として、株式会社いせんの井口智裕氏、カナダ観光局 日本地区代表の半藤将代氏を交え、多摩地域で自然資源を活かした事業を展開する事業者のフィールドを巡りながら、リピート率向上や高付加価値化など、事業をさらに上のステージへ進めるための方法を探求しました。

 

山間部・市街地を結ぶ広域連携フォーラム「多摩の観光は次のステージへ」(2024年12月)

多摩エリアの観光を次のステージに進めるためのフォーラム。多摩エリアの豊かな自然資源を活用した観光事業や活動を行っている事業者や、事業や活動の可能性を広げていきたいと考える方にお役立ていただけるクロストークとダイアログを実施しました。

 

 

見えてきた多摩・島しょ地域の可能性

世界最大の都市、東京。そこに暮らす人たちは、休日は都外へと余暇を楽しみに行くことが長い間ライフスタイルとして定着していました。そんな中でインターネットやSNSを通じて急加速した情報のグローバル化。そして、2020年に起こったパンデミック。移動を制限される中で、足元の価値に目を向けるように時代の空気が少し変化したと思われます。
東京にも改めて目を向ければ、その面積の4割には森が広がり、2,000mを超える山がそびえ、海にはたくさんの島々が浮かんでいる自然豊かな都市であったのです。
インバウンドも増加の一途をたどる中で、東京もまた自然資源を活かしたアクティビティをツーリストに提供できるポテンシャルを存分に発揮していく好機が訪れています 。
多摩・島しょ地域がその地域の人々とともに育んできた自然の価値を再編集し、新しい物語とともに都民やツーリストに提案する。東京都・東京観光財団は「Nature Tokyo Experience」で得た知見やネットワークも資産としながら、今後の取組に活かし、より充実した支援策を実施していきます。

 

一人ひとりのビジターに、最高の「東京体験」を約束する。それが東京観光財団が大切にしている理念です。東京の明るい未来をつくるためには、地域に根ざした事業者がいかによい体験を旅行者に提供できるかにかかっています。
東京都・東京観光財団は東京の自然資源を活かした新たな観光のあり方を模索しながら、今後も事業者支援に力を入れていきます。新たな観光創出、地域振興に挑戦する事業者の皆様、今後の支援事業へのご参加をお待ちしております。

 

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